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第15話 時間をくれ

last update Last Updated: 2025-05-24 11:05:06

家に帰ってからも真司は考えていた。

 どうすればあの理央という娘を立ち直らせることができるのかを。

 彼女はたぶん俺と同じ感覚をもっている。違いなんて陥っている深さだけだ。話すことが苦手で自分をアピールすることができず、周りから置いていかれる。追いつこうともがくほどにまわりはどんどん冷めていく。

 気づけば独りぼっち……。

 考えれば考えるほどその深みは底がなくてもがき続けるしかない。

 それは救えないのか?

 助ける事は出来ないのか?

 俺はどうやって抜け出せた?

 確かに俺はどこからか変わったんだ。

 俺は自分から遠ざけて、周りからも声をかけてくることなんてない、暗い子になることで存在を薄くして、一人だけでいいって殻に閉じこもろうとしていた。

 そんな世界がある日突然に一人の女の子が現れてその子によって変わった。

 一緒にいるだけでほわんとするというか、落ち着くというか。そのコの顔を見るだけで自然と笑顔になれた。カワイイ女の子だったから。明らかに関係する。俺は男だし。

 そう、俺の周りで起きた変化は伊織という女の子との出会いから変わり始めた気がする。

 部屋のベッドでゴロゴロしながら俺は伊織と出会う前、出会う後について考えるようになっていた。

 義理の妹である[伊織]には感謝している。いつもそばにいてくれるし……。

――そういえば、見たくないモノ達と何かあるたびにずっと伊織はいてくれたなぁ。それにそういう日はいつもより優しくしてくれてたような気がする。

 何をやらせても優秀な義妹の伊織は学校でも人気がある。その兄貴の俺も一定の認知度があり、この性格でも浮いてなかったのは、伊織が側にいてフォローしてくれていたから。そのおかげで、この俺にも数は少ないけど友達もできた。

 あの理央てコはどうなんだろう?

 ふと、考えて一つ思いつく。

 枕元に出しっぱなしだったケータイを手に取って画面をタップし、カレンと表示させる。

 俺は自慢じゃないがこちらから女
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  • 幽霊が見えるからって慣れてるわけじゃない!!   第9話 伊織って心配性?

     正確に言うと『会う』なんて事はもう難しくなったといった方がいいか。 ニュースを皮切りに報道による相乗効果も相まって、カレンの加入しているグループ[セカンドストリート]は一躍有名になり今ではトップアイドルとしての位置をつかみそうな勢いになっている。 報道によると、マネージャーの逮捕をきっかけにしてカレンの脱退やソロへの転身なども噂されていたようだが、事務所ならびにカレン本人によって否定され、グループは更に結束を固めたらしい。 カレンを監禁していたマネージャー都築恭司は、あれから割とすぐに話しすらできなくなったらしく、今は何を聞いても意味の分からないことを言っているらしい。「精神鑑定に持ち込まれるなぁ」っと父さんがぼやいているのを聞いた。 都築恭司を蝕んだモノ、それは[欲]というものだと思う。 思うって表現したのは、俺自身がそう断定できるほど知っているわけじゃないからだ。強い欲は表裏一体だと思う。いつもその想いにそれ相応の範囲で応えることができているうちはどうってことないが、応えられなくなった時、対処を間違えたら落ちていくのは簡単なのだ。「お義兄ちゃん? そろそろ起きてこないとホントのにまずいよおぉ?」 都築はまさにその落ちていく方だったらしく、初めのころはカレン達と共に頑張っていたが、売れ始めた時から[強欲]というモノに憑かれ始めたのだろう。それが暴走した結果が、今回の事件へと繋がった。俺はそう思っている。 それを止められなかった事を悔しいと思う。最後の瞬間、どうにかこちら側に戻らせることができなかったのかと、いつもこういう時に思ってしまうのだ。 俺にはまだ、年齢も知識も経験も、体格さえもまだまだ足りないのだと、考え込む日々が続いていく。「お義兄ちゃんってば!!」 ばた~ん!! 勢いよく開かれた部屋のドアから制服姿の伊織が駆け込むように入ってきた。さすがに俺もビクッとなって我に返る。「起きてるなら返事くらいしてよ! もう!! 心配するじゃない!!」 学校

  • 幽霊が見えるからって慣れてるわけじゃない!!   第8話 ゴスッ!!

    「被害者発見!! 被害者発見です!!」「意識はないようですが、無事です!!」 その言葉を聞いてようやく安堵した。 一つため息をついて、ようやく外に出ようと振り向こうとしたが足が動かない。そのうえ震えている。強がってはいたものの、俺はやっぱりビビっていた。 ――ああぁ~!! びっくりしたさ!! 相手大人だし!! こっちは俺一人だし!! カレンいたけど幽霊だし!! それにアイツ鉄パイプとか持ち出してるしぃぃぃぃ~!! てなことを考えていたら、警察の方が後ろから支えてくれた。 付き添われる形で倉庫から出たのはおそらくその10分後くらいだったんじゃないかな。 すでに規制が張られているその下をくぐり警察車両の集まっている方へと誘導される。ちょうど救急車からストレッチャーが出されて倉庫の方へ向かうところだった。これから車の中で事情聴取されるのだろう。「あれ?」 俺は場面に似合わない声を上げる。いや正確には上げたらしい。記憶にない。 歩いた先の車の前に、ヘッドライトでよく顔が見えなかったが、腕を組み足を広げた(言うと怒るからあんまり言えないけど決して長くはない)見慣れたシルエットが見えたから。「や、やぁ、とう……」 ゴスッ!! ッっ!! その場にうずくまる俺。うん、殴られた。マジなヤツ。「な、なにすんだよ!! 俺は子供だし情報提供者だぞ!! 功労者なんだぞ!!」「はっはっはっは。何を言ってる。だからこの位ですんだんだぞ!! 父の愛だと思え!!」 ゴスッ――まさかの二発目きた~~!!「ほらっ乗れ」「わかったから押すなよ!!」 無理矢理に後部へと押し込められると「良くやったな……さすが俺の息子だ」 っと、小さなほんとに小さな声で父さんは言ってくれた。 これには俺もジンと来て「うん」と頷いた。 それからその場で事情を聴かれたのだが、その間に

  • 幽霊が見えるからって慣れてるわけじゃない!!   第7話 大人のチカラ

    ――めっちゃ遅くねぇぇぇぇ~!? つか緊張感台無しだしぃぃぃぃ~!! 心の中で叫んでいた。 ようやく部屋からカレンの姿がなくなった頃、都築が無造作に転がっていた鉄パイプを手に持った。「知られちゃってんなら一人も二人も同じだからなぁ……。ぼうずぅぅぅ消える前に参考までに一応聞いといてやるよぉぉぉ。何でわかったんだぁぁぁ?」「わかったわけじゃない。確信があったわけじゃない」「ならなんでだぁぁぁぁ?」 ――やべぇぇ~、マジでこのままだとやられる3秒前みたいなかんじ? つか、あの人もまだこねぇし、クソッ!!こいつ、もう駄目だ。後ろのヤツにほとんど飲み込まれてやがる!!「はじめは、ただの違和感だった。この1週間のあんたたちの行動や言動を聞いて、なんか違うなって思っただけだった。でも義妹《いもうと》を連れて行ったあの日俺はあんたの背にいる|ソ《・》|イ《・》|ツ《・》」が見えた。そしてあの言葉」「あのことばぁぁぁ?」 焦点が合わなくなった眼が血走り始めている。「あんた言ったろ?すぐに見つかってもうすぐ帰ってくるって」 ぴくっと少し上体が揺れる。 時間稼ぎをしたい俺はさらにまくしたてた。「あれは、あれは生きていることを知ってるし、いる場所も知ってるから出た言葉だろ? それに、周りの人が言ってた。あんた、カレンがいなくなって連絡も取れなくなったのに全然探すそぶりもしてなかったってな!」 そこまでをいっぺんに話したからさすがに息切れした。はぁ、はぁと荒い息をする。こういう時の俺ってほんとに情けない。「んん~、頭の回る子は嫌いじゃないねぇ。どうだい? きみ、俺とくまないかぁぁ?」「ぜったいにお断りします!!」 ばばぁ~ん!!っていう効果音が聞こえてくるようにめっちゃカッコよく決めてみたつもり。「ただ、どうしてカレンの記憶が駅で消えたのかが分からない」「あぁ、それは簡単さ。マネージャーが話があるって言ったら、普通疑いなく付いてくるさ。そこを眠らせたんだよ」

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